少し前の話ですが,レクサスIS Fに試乗する機会がありました。
パッと見は,標準のISとそれほど変わらないように見える。
しかし,ディテールを見ていくとV8エンジンを収めるボンネットの厚み,ファットなタイヤを収めるフェンダーの膨らみ,4本出しマフラー,BBS鍛造ホイールからのぞくドリルドローターとブレンボ製キャリパー(といってもLEXUSと書いてあるが)が,標準車との違いを明確に誇示している。
アイドリング時の排気音は,V8特有のドロドロとしたサウンドではなく,ブォーと連続的な重低音で大きめの排気音。国産社の純正マフラーにしては,かなりの低音と迫力のある音。
スポーツモードの設定で,アクセルを踏み込みスタート。
クーンとハイトーンの排気音が実に気持ちいい。スポーツモードからノーマルに戻すと,アクセル操作に対しエンジンの反応が一気におとなしくなる。荒っぽい操作をする人はこちらだと思うが,私はアクセル操作に対するエンジンの反応が忠実なスポーツモードの方が好みである。
乗り心地は,ハードな設定ではあるものの私としては十分に許容できる,というかこれくらいが好み。以前に試乗したBMW323iの19インチのMスポーツも乗り心地は固かったが,シビックTYPE-Rの硬さを味わった後では,どれもマシに思える。
ハンドリングは,V8エンジンの重さが響いて・・・とは余り感じなかった。V6と2台を交互に乗り比べれば違うのかもしれないが,この車だけ乗るのであれば,私のレベルでは判らない。
100km/h走行時の8速ATのトップギヤにおけるエンジン回転数は約1500rpm。この状態では,排気音は聞こえない。心地よい排気音を聞くために,わざわざ1速落として2000rpm付近から加速したくなる。
加速中は,ある回転域からエンジンの音(吸気音)が変わり,V型特有のパルス音を響かせながら高回転域までシャープに回っていく。423PSを味わうためにきっちり6800rpmのレッドゾーン手前まで回してみる。5リッターの排気量から暴力的な加速を予想していたのだが,そこは現代の車。もちろん文句無しに速いのだが,怖いとか過激とかいった感覚ではなく,スムースに車速を伸ばしていく。
ブレーキ性能は,勿論公道では不満が出るはずも無く,これまでに乗った車の中で一番かっちりした感じで信頼できそう。
尚,「3代目セルシオ」すなわちLS430では,ユーザの高級指向を考慮して効きよりも鳴きを排除したブレーキとしていたそうだ。そこまで言わないにしても,レクサスブランドを名乗るのであれば,キーキー鳴くブレーキはなんとかして欲しいポイント。
IS FはBMWのM3やAMG(Cクラス)に並んだ初めての日本車であろう。
この車は,日本の公道では(私のような素人が)性能をフルに使いきれる場所は無い。5リッターエンジンのパワーはゆとりのために使う,いわゆる大人の乗り方が似合う車だと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これまでの試乗を終えて
機会に恵まれて,IS FやTYPE-R,RX-8という,日本車の中ではかなり個性の強い車に試乗できた。世界的に見るともっと個性的な車が存在するようだが,さすがに敷居が高く乗りたくても乗れないのが残念である。
今回の試乗で改めて「車というものは面白い乗り物」だと再認識した次第である(もっとも,全身を使って操るバイクの方が,もっと面白いのは言うまでもないが)。